自己破産
貸金業者から借りたお金を返すことがもはやできなくなったとき、債務者は、裁判所に対して自己破産手続きの申立てをすることができます(破産法15条)。
自己破産の手続きは、主に以下の流れに沿って進行します。
①裁判所への申立て
上述したように、まずはお金を借りた人である債務者か、お金を貸した人である債権者が、破産手続開始の申立てを裁判所によってする(破産法16条)ところから始まります。
②破産手続開始の決定
当事者からの申立てがあった時、裁判所は、債務者の負っている債務を調べたり、直接債務者の話を聞いたりして、借金を返すことが不可能かどうかを検討します。そして、債務者の借金がもはや「支払不能」だと認められた際に、裁判所は破産手続開始の決定をすることとなります。
なお、この後の手続きは、債務者に金銭に換えることができる財産があるか否かによって枝分かれするため、場合に分けて説明します。
■債務者に財産がある場合
⑴管財人選任
弁護士の中から管財人が選ばれ、これ以降は債務者の所有している不動産、動産等の財産は管財人の管理の下に置かれます。債務者が財産を勝手に処分して、債権者に配当されるはずであった金銭を侵害することがないようにするためです。
⑵債権者集会及び配当
管財人と債権者が集まり、債務者の財産を分配するための集会を行います。これが適式に行われた後、配当が行われ、破産手続は完了となります。
■債務者に財産がない場合
財産がないことが明らかなときは、破産手続開始決定をすると同時に、破産管財人を選ばないで破産の手続を終わらせるという、破産の「同時廃止」をすることになります。この場合には、破産管財人が財産をお金に換える手続は行われないため、破産手続開始決定がなされ、同時廃止の決定がなされたときに、破産手続が終了することとなります。
なお、財産には不動産だけでなく、預金や自動車保険の解約返戻金(生命保険や火災保険などに加入している人が,解約したときに受け取ることができるお金のこと)、又は、仮に現在退職した場合に受け取るであろう退職金などすべてのものを含みます。
また、上記のように破産手続が終了したとしても、依然として債務者に債務は残ったままです。債務責任を免れるためには、破産手続開始決定が確定した時から1ヶ月以内に、免責許可申立てをしなければならないので、注意が必要です(破産法248条1項)。
免責は基本的に許可されることとなりますが、
・債権者を害する目的で、財産の価値を不当に減少させる行為や財産の隠匿をしたこと
・浪費または賭博行為によって自分の財産を減少させたこと
・破産手続きで裁判所が行う行為について虚偽の説明をしたこと
などがある場合には、免責されないことがあります(同法252条1項各号)ので、自己破産をする際にはこれらの事由に当てはまるか否かを、法律事務所等に相談することをお勧めします。
最後に、自己破産をした際のメリットデメリットについて説明します。
自己破産は、やはり他の債務整理制度と異なり、免責によって債務の全部を免除されることがメリットと言えます。借金から解放されて、新たなスタートを切りたいという方にはお勧めできる制度です。
ただ、その一方で、自己破産手続きを開始した際には、自らの所有する財産はほぼ全て金銭となり、債権者に分配されることとなります。自らの手元に残すことができる財産は、99万円を超えない額での現金のみとなりますので、運用する際には、細心の注意を払う必要があります。
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