法人破産
法人は、人権享有主体の一種として、社会において契約を締結する等の一般私人と同様の法律行為をすることができ、当然、お金を借りるといった消費貸借契約(民法587条)をすることもできます。そして、法人が借りたお金を返すことができなくなったときに、法人を解散させて所有している財産を債権者に分配させる手続きのことを「法人破産」といいます。では、法人破産とはどのような順序でなされるのでしょうか。以下、説明します。
①破産手続の決定
まずは、会社の取締役によって、事業の停止をして、破産手続をすることが決められます。なお、事業を継続するか否かは「業務執行の決定」(会社法362条2項1号)に関わることであるため、取締役会設置会社の場合は、取締役会決議(同法369条1項参照)を必要とします。
また、例外として、破産申立について取締役会決議を得ることが難しい場合、個々の取締役が破産の申立を行う「準自己破産」(破産法19条1項2号)という制度もあります。
②弁護士の依頼及び債権者への受任通知
破産手続をすることを会社の中で決めた後は、弁護士に破産手続を依頼することがほとんどです。
というのも、貸金業法21条1項9号に、
「債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において,正当な理由がないのに,債務者等に対し,電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は訪問する方法により,当該債務を弁済することを要求し,これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず,更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること」を禁止する規定が置かれています。
よって、依頼を受けた後は、上記に則り、弁護士は、債権者に対して、債務の処理を受託したことの通知をすることになります。
③弁護士による申立て及び裁判所の決定
法人から必要な書類等を受け取り、また、多額の借金を負うようになった経緯を聴取した後、破産申立書を作成し、裁判所に提出することとなります。
その後、裁判所が、法人が借金を支払不能であると認めた際に、破産手続開始の決定がされます。
なお、この破産手続開始決定により、会社の有する一切の財産は「破産財団」となり、会社が処分することはできなくなります。また、以後は破産管財人が管理します。
④破産管財人との話し合い及び債権者集会
破産管財人が選任された後は、破産財団に関する一切の権限を管財人が持つこととなります。そして、法人の代表者、弁護士、破産管財人で、処分すべき財産についての協議がされた後、債権者集会が行われます。
⑤債権者への配当及び終結
破産財団の換価が終了し、債権者へ支払う原資が確保できた時、債権者に対して債権額に応じて平等に支払われることとなります。
以上が法人破産の手続きです。
個人が破産手続きをする自己破産においては、自己破産の手続きが開始決定され、その後の免責許可も決定されたときに、債務者は今までに負っていた債務を返済する責任を負うことがなくなります。それに対して、法人破産をした際には、法人そのものが消滅するので、破産手続によって当然に債務を免責されるというところが、自己破産との大きな違いといえるでしょう。
法人破産は従業員や債権者など多数の人に影響することですので、破産手続きをする際には、まず弁護士等の専門家へ相談し、破産手続をすることに適しているかどうかを判断してもらうことが肝要です。
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