労働条件の不利益変更が認められてしまう要件とは
使用者と労働者は労働契約を締結しており、労働条件は、この労働契約によってきめられています。
労働契約のような契約の内容は、一方当事者によって一方的に変えることができないのが原則ですが、労働契約の場合には別異に考える事情があります。
すなわち、使用者は労働者一人一人と、契約の内容について合意をして労働条件を定めるのでは、労働者に対する画一的な労務管理ができず、労働条件が複雑なものとなってしまいます。
そのため、使用者は、就業規則を作成して、その内容が合理的であり、周知がなされていれば、その内容が労働契約上の労働条件になるとされています。
また、労働組合と使用者との間で締結された労働条件に関する労働協約も、個別の労働契約に優先して労働条件となります。
さて、就業規則や労働協約を不利益に変更することによる労働条件の不利益変更は認められるのでしょうか。
このページでは、労働条件の不利益変更が認められる条件についてご紹介します。
労働条件の不利益変更が認められる条件
労働条件の不利益変更が認められる条件としては、以下のものが考えられます。
- 労働契約の個別合意
使用者と労働者の個別の労働条件を、合意によって不利益に変更することはできます。
また、就業規則の不利益変更も、労働者の合意があれば、労働条件の不利益変更として効果を持ちます。
- 就業規則の不利益変更
労働者は労働条件の不利益変更には合意をしないことが通常といえます。
そのため、使用者としては、就業規則の変更によって「一方的に」労働条件の不利益変更をすることが考えられます。
就業規則の不利益変更が有効に労働条件を変更するのは、①就業規則の内容が合理的であり、②就業規則が周知されている場合となります。
②就業規則の周知とは、就業規則を見ようと思えば見ることができる状態に置いていることをいい、多くの場合、問題となりません。
これに対して、①就業規則の内容が合理的かどうかは、就業規則変更の必要性、就業規則の変更によって被る労働者の不利益の内容、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合や、従業員との交渉条件、そのほかの就業規則変更にかかる事情によって判断されます。
賃金の変更など、労働者に与える影響が大きい場合には、就業規則変更の高度な必要性が要求されます。
この就業規則の内容の合理性の判断には、専門的な知識や経験が必要となります。
- 労働協約の変更による不利益変更
労働協約は労働組合員の労働条件を規律します。
これには例外があり、工場事業場において常時使用される、同種の労働者の4分の3以上の多数による労働者が労働協約の適用を受ける場合には、非組合員である同種の労働者にも労働協約の拡張適用があります。
そして、労働協約の不利益変更があった場合、組合員や上記例外的な場合の非組合員の労働条件を不利益に変更します。
もっとも、特定の組合員や少数の組合員をことさら不利益に扱うことを目的にした労働協約の不利益変更と認められる事情があれば、労働協約の規範的効力は否定されます。
また、非組合員は、組合員と異なり、組合の意思決定に関与する立場にないため、特段の事情があれば拡張適用を受けません。
その判断は、不利益の程度・内容や、労働協約変更の経緯、当該非組合員に組合への参加資格があるかどうかが考慮されます。
なお、拡張適用がない労働協約については、労働組合からの脱退によってその効力は受けなくなります。
労働問題にお困りの方は紫葵法律事務所までご相談ください
労働条件の不利益変更には大きく分けて3つの方法があり、そのうち、就業規則の変更は完全に一方的に不利益変更を認める方法であり、労働協約の変更も、労働組合との合意が必要であり、その意思決定に関与できる意味では一方的とは言い得ないものの、個人の意思が必ずしも反映されない点で、不利益変更の危険性があります。
これらの適合性や、争い方、請求の内容など、お困りのことがあれば、労働問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。
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